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| 大和 昇平
「今思えば、あの日の話は、この発見がすでに予定されていたからだったのだ。
それに私は気付かなかった」 |
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| 関南 | |
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岸 里美 | 番組がなくなってしまわなくて良かったです。芳川光葉さんはこの放送をとても気にいっておりましたので。 |
大和 昇平 | こちらこそ。番組が続くことを芳川光葉さんが喜んで下さって嬉しく思っています。 |
片桐 則子 | もちろんです。 |
浦永 宅也 | 芳川光葉さんの出演がなくなったら視聴者だけでなくスタッフもみんながっかりします。 |
榎田 日出之 | もったいないお言葉、嬉しく思います。 |
大和 昇平 | そこで相談なんですが、この期間を空けておいて欲しいのです。 |
岸 里美 | 春の特番ですよね?ずいぶん早くからはじめるのですね。 |
片桐 則子 | 岸さん、私も今初めて聞きました。そんなに早くから準備をするのですか? |
浦永 宅也 | 今回は番組再会ということで、とても力を入れているのです。こまかくやっていきたいのです。 |
榎田 日出之 | なるほど、それでは調整にかかりましょう。 |
大和 昇平 | 輪島さん、この番組も最優先でお願いしますよ。 |
岸 里美 | もちろんです。できる限りのことをします。 |
大和 昇平 | 心強い限りです。よろしくお願いしたします。 |
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| 大和 昇平
「この、彼らの話は途方もないことへと発展していく」 |
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| チャット |
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岸 里美 | 今話題の女王を使うのはどうかと思うのですが。 |
栗山 義朗 | 石板を作って、栗山さんが発見し、私はそれを放送するのです。 |
伊野部 吾郎 | ここからは我々だけの秘密事項です。くれぐれも他人に気付かれないように注意しなくてはなりません。いいですね。 |
栗山 義朗 | こんなことが公になれば我々は破滅です。 |
岸 里美 | 分かりました。で、どうしようというのです? |
伊野部 吾郎 | 女王の愛の詩の石板を発見するというシナリオです。北の墓を使おうと思います。その準備と後始末を伊野部さんにやってもらいたいのです。 |
栗山 義朗 | 私がですか? |
岸 里美 | もちろんです。盗みは専門でしょう?バステトさん。 |
栗山 義朗 | なぜそのことを知っているのですか? |
伊野部 吾郎 | 長年ここに住んでいる私の目は節穴ではない。伊野部さんのやっていることくらい見当がついている。 |
岸 里美 | それに、ちょっと調べさせていただきました。伊野部さんの過去の悪事の数々を。 |
栗山 義朗 | 私を脅そうと言うのですか? |
伊野部 吾郎 | 脅す?利益を与えようとしているだけです。石板はきっと伊野部さんに利益をもたらすことでしょう。 |
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| 大和 昇平
「彼らの計画は見事成功したように見えた。
しかし、山西麻子のカメラがその悪事を見つけ出した。
最後まで遂げさせることをしなかったのだ」 |
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| 伊野部吾郎の日記
「参った。間一髪だった。
あとはあいつらが全てを話さないことを祈る」 |
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| チャット |
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栗山 義朗 | どうなっているのですか?間一髪でしたよ。 |
岸 里美 | あそこには、カメラがあったのです。 |
栗山 義朗 | 誰がそんなことを? |
岸 里美 | 山西麻子さんです。あんな発見の後なのに、警備がうすいことを心配したのです。 |
伊野部 吾郎 | そのカメラに少しだけですが伊野部さんの姿と声が入っていたのです。 |
栗山 義朗 | はっきり分かるのですか? |
伊野部 吾郎 | いや、幸い暗かった上に反響していて確証はありません。しかし、携帯の着信音が入っていたのです。 |
岸 里美 | その映像はどうなったのですか? |
伊野部 吾郎 | 園咲さんが警察に持って行きました。なので、念のため着信音を変えておいた方が良いでしょう。明日からの旅の二日目に会う予定ですから。 |
栗山 義朗 | 『春』を『秋』にでもしておきます。 |
岸 里美 | ふざけないでください。もっとはっきり違うとわかるものが良いでしょう。 |
伊野部 吾郎 | わかりました。じゃあ『ビートルズ』にでもしておきますよ。 |
岸 里美 | 忘れるといけません。今のうちに変えてください。 |
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| 大和 昇平
「私もこの放送に関わることになる。
この段階で、連中の策略を少しでも知ることが出来ていたらと悔やまれる。
悪者とはいえ、一人の命が奪われたのだけら。
何かをするきっかけがあれば、止めることが出来たかもしれない。
残念だ」 |
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| チャット |
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栗山 義朗 | 準備はどうですか? |
岸 里美 | 計画通り、呪いの噂で近づく者もおりません。 |
栗山 義朗 | よくそんなことまで思いつきましたね。 |
岸 里美 | 石板が女王のものであることに信憑性をもたせたほうが良いと思ったのです。 |
伊野部 吾郎 | ひき続き女王の話題でもちきりです。 |
栗山 義朗 | 石板の準備はどうですか? |
伊野部 吾郎 | 計画通り全て順調です。 |
栗山 義朗 | カルナックの話も進んでいます。なにもかも順調です。 |
伊野部 吾郎 | それはそうと、ひとつ気になることがある。園咲さんが呪いの噂を確かめるために担当になるというのだ。 |
栗山 義朗 | それはまずいことになりましたね。 |
岸 里美 | 園咲さんは頭も良い上に真面目で情熱家です。石板のことが知れたら、きっと大変なことになるでしょう。くれぐれも気をつけてください。 |
伊野部 吾郎 | わかりました。一芝居打っておきましょう。 |
栗山 義朗 | あまりやりすぎないようにしてくださいよ。 |
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| 大和 昇平
「伊野部さんは隠蔽工作の為に着信音を変えたようだ。
そこまでするほど彼らは心を悪に奪われていたのだ。
更にその隠蔽工作の話が続く」 |
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| チャット |
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輪島 亮次 | 変えました。着信音について聞かれたら、盗掘をした人物が、私に罪を着せるために「春」にしていたのではないかと言いますよ。 |
岸 里美 | それが良いでしょう。 |
芳川 光葉 | お二人もちゃんと口裏を合わせていただけますよう。 |
大和 昇平 | もちろんです。伊野部さんが捕まれば、栗山さんと私も危ないことになるわけですから。 |
芳川 光葉 | まったくです。 |
岸 里美 | それにしても捕まった二人は大丈夫なのでしょうか? |
輪島 亮次 | それは大丈夫でしょう。計画の全てを話せば罪が重くなるだけです。発見があったと知り、盗掘を考えた、と話すくらいかと思われますが。 |
大和 昇平 | しかし、あの石板は年代測定に掛けられる。あれが贋物だと分かったら、大騒ぎになるだろう。 |
岸 里美 | そうなったらどうなるのでしょうか? |
輪島 亮次 | バステトもその道の達人だ。真実は分からずじまい、我々は誰かの悪戯に惑わされた。それでおしまいということになるでしょう。 |
芳川 光葉 | それで済めばよいのですが。 |
輪島 亮次 | とにかく、うまく行くことを祈りましょう。 |
岸 里美 | そうですね。 |
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| 大和 昇平
「こうして私のまわりで少しづつ何かが動いていった。
このころ、発掘の人々の周辺が慌しくなっていたことを後で知る」 |
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| チャット |
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栗山 義朗 | どうしても私は失敗するわけには行かないのです。 |
伊野部 吾郎 | 私も同じです。このままでは、発掘を続けるのは難しい。園咲さんと山西さんにも夢を与えることすら出来ない。 |
岸 里美 | 金のためですか? |
栗山 義朗 | きれい事を言うようですが、昔の夢を叶えるためです。 |
伊野部 吾郎 | 私だって、ただ地位や名誉が欲しいのではありません。私を支えてくれている人々のためにも何とかしたいだけです。 |
栗山 義朗 | 何か大きな発見があればいいのでは? |
伊野部 吾郎 | そんなものが簡単にみつかれば苦労はいりません。 |
岸 里美 | 発見か。それなら、本物でなくてもいいのではないでしょうか。 |
栗山 義朗 | すでにある学説を事実のように仕立てるなら、考えられなくもないですが。 |
伊野部 吾郎 | 劇的な話題をお願いします。 |
栗山 義朗 | 栗山さん、何か案があるのですか? |
伊野部 吾郎 | 少し時間をください。考えて連絡します。 |
栗山 義朗 | 良い案が出たら、必ず私に教えてくださいよ。私は、金になることならなんでもやりますから。 |
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| 伊野部 吾郎の日記
「あいつらは、何で私の過去を知ったんだ?
まあいい、これで同じ穴のムジナ、お互い様さ」 |
| 大和 昇平
「彼らはそれから綿密な計画を立てた」 |
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| チャット |
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伊野部 吾郎 | 北の墓で女王の石板が発見される。 |
栗山 義朗 | 栗山さんはすぐに私に連絡をよこす。 |
伊野部 吾郎 | 発見のようすを放送してほしい、と持ちかけ、すぐに駆けつけてもらいます。
その間発掘は止めておきます。 |
栗山 義朗 | 協力体制のように見せかけるのです。 |
岸 里美 | しかし、園咲さんや山西さんもいるわけですし、そんなに精密なものが用意できるでしょうか。 |
伊野部 吾郎 | 私が内容から刻印まで指示します。誰が見ても本物に見えるでしょう。 |
栗山 義朗 | 分かりました。作るのは良いとして、その石板はどうやって北の墓へ入れるのですか? |
伊野部 吾郎 | 北の墓に横穴を作り、そこから入れ、盗むときもそこから行います。 |
栗山 義朗 | わかりました。おっしゃるとおりにいたしましょう。 |
伊野部 吾郎 | ポイントは発見から放送、盗掘までを手早くやることです。 |
岸 里美 | 過去の失敗がこんなところで役に立つとは思いませんでした。だれもがきっと、私が一番に放送するために急いだのだと思うでしょう。 |
伊野部 吾郎 | それを私が売りさばくのですね。素晴らしいシナリオですね。さすがは栗山さんです。 |
岸 里美 | 早速、愛の詩を作る準備に掛かるとしましょう。よろしくお願いしますよ。 |
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| 大和 昇平
「この書は、私がこの目で見たこと、
そして伊野部さんのパソコンによって知った真実である」 |
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| 関南 |
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伊野部 吾郎 | 私はもうあなた方と一緒にいられないかもしれません。どこか遠くへ行かされそうなのです。 |
栗山 義朗 | 岸さん、そうなったら我々を置いて行かれるのですか? |
伊野部 吾郎 | 私はあなたを心から信じて尊敬しています。私はあなたにどこまでも付いていきます。 |
岸 里美 | 私もです。 |
栗山 義朗 | もちろん私も。 |
岸 里美 | 私は、あなたに制裁を加えたやつらを許しません。今から抗議に行きます。 |
伊野部 吾郎 | ありがとうみなさん。でも少し待ってください。最後の機会が与えられたのです。私はこの機会を絶対に逃しません。力を貸してくれますね? |
栗山 義朗 | もちろんです。貴方への忠誠を誓います。 |
岸 里美 | 私もです。 |
伊野部 吾郎 | 決まっているじゃないですか、もちろんですとも。 |
栗山 義朗 | できることならなんでもいたします。 |
岸 里美 | みなさん、ありがとう。 |
栗山 義朗 | 頑張りましょう。岸さん。 |
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| 大和 昇平
「しかし、伊野部さんの旅は終わらなかった。彼はナイルに残ったのだ。
いや、取り残されたのだ。殺人という残酷な方法で」 |
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